自治体や学校で活用されている調査ツールの紹介

子どもの発達科学研究所が開発・提供している調査ツールは、様々な自治体・学校に導入され、個別の課題に対して着実に成果を出しています。
現在進行中の事案も含め、以下に導入事例を紹介します。

導入事例01

NHKスペシャルでも紹介された、
子どもがSOSを発信できるWebアプリ
大阪・吹田市 ×「デイケン」

こころとからだの連絡帳「デイケン」は“朝の健康観察”をデジタル化したWebアプリです。子どもが各自のタブレット端末から、心身の状態や先生への相談希望について1分ほどで入力。内容は即時に集計され、先生のタブレット端末やPCで一目でわかるようになっています。

大阪府の吹田市教育委員会では、2022年度に文部科学省から受託した「いじめ対策・不登校支援等推進事業」の取り組みの一環として、2022年9月から「デイケン」を導入。現在は吹田市立小・中学校全54校で活用されています。子どもの発達科学研究所はこの受託事業に全面協力。約3万人の子どもが簡便にSOSを発信できる環境づくり、リスクのある子どもの早期発見・早期支援を推進中です。その様子は、NHKスペシャル『“いじめ”から、逃げない 3年2組 4か月の挑戦』(2023年5月6日放送)でも紹介されました。

実際に「デイケン」を活用している学校現場からは、「子どもが話を聴いてほしいタイミングがわかる」「ワンクリックで先生から声をかけてもらえることは安心につながると思う」「朝の忙しさが半減した」などの声が寄せられています。使えば使うほどデータが累積されていき、より精度の高い判断が可能となる。そんな「デイケン」の特性を活かして、引き続き子どもの支援に役立てていきます。

導入事例02

日本では前例のない、6万人にのぼる
小中学生のメンタルヘルス調査
東海地方の政令指定都市×「NiCoLi」

こころの健康観察「NiCoLi」(ニコリ)は、子どものメンタルヘルスの不調をスクリーニングするデジタルツールです。エビデンスに裏付けられた調査分析システムによって支援ニーズが高い子どもを的確に抽出。学校に求められる対応について、具体的に示したマニュアルも提供しています。

2020年度、東海地方の政令指定都市であるA市は市内全小・中学校に「NiCoLi」を導入。約5万6,000人の子どもに対するメンタルヘルス調査を実施しました。目的は、新型コロナウィルスパンデミックという状況下で子どものこころの健康状態を把握し、各学校において子どものこころを守る手立てを構築することです。その結果、男女ともに小学校低学年で抑うつ・不安傾向が高いことなどがわかってきました。
A市の要望を受けて、翌2021年度にも調査を継続(対象は約6万人に増加)。「中学生の女子で抑うつ・不安傾向が前年度より高くなっている」「特別支援学級の子どもたちの抑うつ・不安傾向は2年連続で高い」など、経年調査ならではの結果を得ることができました。
かつて日本にはなかった大規模かつ経年の調査によって、質の高い統計的検討が可能になっています。子どもの発達科学研究所では、抑うつ・不安傾向のある子どもを対象とした2次スクリーニングや、校内支援体制構築のためのマニュアルも提供しています。

導入事例03

脳科学のエビデンスに基づいて授業を改善し、
不登校やいじめを減らす
東京・国立市立第二中学校×
「学校風土調査」

学校風土調査は、学校の雰囲気について子どもが無記名で回答するアンケート調査です。これは文部科学省委託事業「子どもみんなプロジェクト」で開発された学校風土尺度を用いており、日本で唯一、信頼性と妥当性が科学的に確認されています。

東京都の国立市立国立第二中学校は、不登校やいじめが増加傾向にあり、学校風土の改善が喫緊の課題となっていました。そんな中、「学校風土調査」の存在を知った校長先生は、すでにこの調査を導入していた学校の研究発表会に参加。2019年度から、国立第二中学校への導入を決めたのです。最初のアンケートで「学校の授業は楽しい」に関する項目の偏差値が低いことに着目。子どもの発達科学研究所から助言を受けながら、国立市教育委員会の研究指定校として、3年計画で授業の改善に取り組みました。脳科学のエビデンスに基づき、「Y字チャート」「知識構成型ジグソー法」などを採用。子どもが自分の意見を持って議論し、理解を実感できる授業を展開していきました。

「学校風土調査」を年2回実施したところ、「学校の規律・安全・安心」「学習環境」「生徒同士の関係」「生徒と教員の関係」という4項目全てにおいて偏差値が上昇。文部科学省「子どもの問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」でも、国立第二中学校は不登校の生徒数・いじめ件数ともに減少しました。