ACEとは、Adverse Childhood Experiences、逆境的小児期体験を意味します。
子ども時代の経験は、大人になってからの生活にも影響を与えます。また、親からの虐待がそのときの子どもの心を傷つけるだけでなく、その後の人生に大きな影響を与えることは、今や多くの方が知っていることではないでしょうか。
1990年代後半に海外で始まったACE研究によって、家庭内での虐待や家族の機能不全は、成人期のメンタルヘルス、身体疾患、社会適応など、様々なことのリスクを高めることが証明されました。しかも関連があるとされる成人期の問題は非常に幅広く、ACEの点数が高いほど、心臓病、糖尿病、肥満、うつ病、薬物乱用、喫煙、就労の問題などのリスクが劇的に高くなる(Anda et al.,2006, Bellis et al., 2017, Hughes et al., 2017)という結果になったのです。
ACE研究はその後、発展していきます。ACE研究で取り扱うACE10項目は、もともと家庭内のことだけを扱っていました。しかし家庭の外にも子どもを傷つけるような体験はあるはずです。そこでACEの概念を拡張するための研究が始まりました。
しかし、こうしてACE研究が発展してきているにもかかわらず、「学校での傷つき体験」をACEの枠組みの中で取り上げた研究は、これまでほとんどありませんでした。
子どもたちは学校で多くの時間を過ごします。そして学校は安心安全な場であるべきです。しかし、世界中の学校でいじめが問題になっている現状があります。
そこで、わたしたち子どもの発達科学研究所らのグループは、学校での傷つき体験(学校ACE)の影響について研究をはじめました。
その結果、学校ACEとひきこもりに強い関連があることが、世界で初めて明らかとなりました。
本研究成果は、国際的科学誌「Frontiers in Public Health」に2023年10月26日(木)に公開されました。
論文:学校ACE®(School Adverse Childhood Experiences:学校における逆境的小児期体験)が、ひきこもりに強い関連があることが、世界で初めて明らかに ~ひきこもりの予防には、学校の変革が重要との結果に~
タイトル | : | Adverse childhood experiences: impacts on adult mental health and social withdrawal |
---|---|---|
著者名 | : | Manabu Wakuta,Tomoko Nishimura, Yuko Osuka, Nobuaki Tsukui, Michio Takahashi,Masaki Adachi, Toshiaki Suwa, Taiichi Katayama(和久田学、西村倫子、大須賀優子、津久井伸明、高橋芳雄、足立匡基、諏訪利明、片山泰一) |
DOI | : | https://doi.org/10.3389/fpubh.2023.1277766 |
※学校ACE®は公益社団法人子どもの発達科学研究所の登録商標です
解説版動画:学校ACE研究(公益社団法人子どもの発達科学研究所 主席研究員 和久田学)